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『大久保利通』

                    小林 義典 【TOSS SANJO】

大久保利通は廃藩置県の断行の中心人物である。
廃藩置県。これは全国270人の大名の大量解雇を意味した。
また,180万人にのぼる武士とその家族の収入を失わせるものであった。
廃藩置県により,「武士」の身分は消滅する。
これを断行したのは武士たちであり,これに従ったのも武士自身であった。
日本を改革するために働いた人々の利益にならないどころか,
その身分さえなくしてしまうような革命は,世界でも例がない。
しかも,これだけの大改革を行うのに,一滴の血も流されなかった。

廃藩置県の実施により封建制度は撤廃され,
日本は近代化の道を歩むことにる。

Webワーク


【発問】(大久保利通の写真を提示)誰でしょう。

・大久保利通です。

【発問】この写真を見て,気付いたこと,分かったこと,思ったことを書きなさい。

・書物を持っています。
・偉そうです。
・おでこが広いです。
・外国風の刀を持っています。
・上品な人柄です。
・理想が高そうです。

【説明】大久保利通は,薩摩藩の生まれです。西郷隆盛や長州藩の桂小五郎と協力して幕府を倒し,新しい政府,明治政府をつくりました。
【発問】ところで,江戸幕府が倒されて,すぐに新しい日本が生まれたのでしょうか。

A(すぐに生まれた)派(21名中8名):      ・教科書に載っている絵を見ると江戸時代とは全然違うから。
                            ・解放令が出て四民平等となったから。
                            ・西洋の文化をお手本として受け容れたから。
B(すぐに生まれなかった)派(21名中13名):・江戸時代が長く続いて印象が深かったので,そう簡単には変わらなかったと思うから。

【説明】日本の国の基本的な構造はほとんど変わりませんでした。
幕府が倒れた後に明治政府が出来ましたが,それは名ばかりでした。
新しい国づくりには,まずお金が必要だったのです。しかし,明治政府には政治を行うためのお金がありませんでした。
【発問】明治政府にお金がなかったのは,何故ですか。

・明治政府はつくった薩摩や長州は日本の端の国で,お金がなかったからです。
・西洋の文化を取り入れることで,お金をたくさん使ったからです。
・徳川幕府がすでにお金を使い果たしていて,政府にお金が残っていなかったからです。

【説明】明治政府には,江戸幕府から引き継いだ天領がありました。しかし,そこから得るお金だけでは全然足りませんでした。
「江戸幕府」というと,まるで絶対的な力をもっていたかのようですが,お金の面ではたいした力をもっていなかったのです。
日本の国は,当時まだ実質的には「藩」という小さな国に分かれていました。それぞれの藩のリーダーである大名が力をもっていたのです。
「このままでは,新しい日本を築くことができない。」と大久保利通は強い危機感を抱きました。
【発問】大久保利通は何をしたでしょうか。

・大名でも逆らえないような偉い人を藩のリーダーとして各藩に派遣しました。

【説明】廃藩置県を行いました。(廃藩置県と板書)
一緒に読みます。さんはい。
【発問】廃藩置県とは,何をどうすることですか。

・日本全国の「藩」を廃止し,「県」をおくことです。

【説明】当時の藩の財源は,年貢です。
まず,農民が大名に年貢を納めます。大名はその年貢を藩内の武士に給料として分け与えます。
武士は,給料をもらって生活していたわけです。大名は,単に年貢を集める権利をもっていたに過ぎません。
【説明】廃藩置県によって,年貢は全て新政府に集めることになりました。
【発問】年貢が全て新政府に集められることになると,困る人が出ます。誰が困りますか。

・大名が困ります。
・大名に給料をもらっている武士も困ります。

【説明】廃藩置県とは,単に藩を廃止して県をおいただけではなく,
全国の大名を一斉にクビにし,武士とその家族の収入を失わせることでもあったのです。
【発問】当時,全国に大名は何人いたでしょう。

・10人位です。
・100人位です。
・80人くらいです。

【発問】大名は約270人いました。それでは,武士とその家族は何人いたでしょう。

・1000人位です。
・800人位です。

【説明】武士とその家族は約180万人いました。三条市の人口の30倍ほどです。
廃藩置県によって武士という身分がなくなりました。
全国270人の大名はクビになり,武士とその家族180万人が職を失ったのです。それだけ大きな改革でした。
【発問】大久保利通らが廃藩置県を行おうとした時,全国の武士たちはどうしましたか。

・反抗しました。
・大久保利通を暗殺しようとしました。

【説明】大久保らは,武士たちの抵抗に備えました。薩摩,長州,土佐の3つの藩から約1万の兵を東京へ集めたのです。
この時,西郷隆盛は戦争になることを覚悟していました。
しかし,全国の武士は,「廃藩置県」を行うという明治政府の決定に従いました。
これにより,廃藩置県は一滴の血も流さずに実現できました。
【発問】明治新政府をつくったのは,どんな身分の人だったでしょう。

・農民です。(21名中,12名)
・分かりません。(21名中9名)
(「武士」という答えは出てきませんでした。)

【説明】幕末,討幕運動に身を投じ,徳川幕府を倒し,明治新政府をつくったのは,基本的には武士たちでした。
大久保利通はもちろん,西郷隆盛や桂小五郎も同じ,武士でした。
【発問】この事実をどう思いますか。

・大久保利通たちは,武士の裏切者と言われたと思います。
・武士が自分たちの身分を無くするのはおかしいと思います。しなくてもいいことだったと思います。

【説明】古い日本を改革するために働いた人々の得にならないどころか,その身分さえなくしてしまうような革命は,世界でも例がありません。
伊藤博文は廃藩置県の半年後,サンフランシスコを訪れた時のアメリカ側の歓迎会で,胸を張ってこのように述べています。
たった一発の弾丸も放たず,一滴の血も流さずして数百年の伝統と強固さを誇る日本の封建制度は撤廃された。
一滴の血も流さずに封建制度を撤廃した国が世界のいったいどこにあるだろうか。
西洋ではこのような大きな改革があると,争いが起き大勢の方が亡くなります。例えば,フランス革命。これは約200万人の方が亡くなっています。
日本では,幕末の志士の討幕運動から戊辰戦争や西南戦争を含めても,2万人ほどの犠牲でした。
【発問】当時の武士は,なぜ廃藩置県のような,自分たちの身分さえなくするような政策を受け容れたのでしょうか。

・血を見たくなかったし,死にたくなかったからです。
・武士達は,政府軍には勝てないと思ったからです。
・日本人同士で戦っても,仕方がないと思ったからです。
・残酷なことは避けたかったからです。

【説明】福井藩に,アメリカからグリフィスという人が藩の学校の教師として来ていました。
廃藩置県が行われると聞き,藩の武士たちは怒って大騒ぎとなりました。
しかし,その中で,知識ある武士たちはグリフィス先生に胸を張って語りました。
これからの日本は,あなたの国やイギリスのような国々の仲間入りが出来る。
【説明】そして,グリフィス先生は,生徒たちにこのように語りました。
君たちの国は血を流さずに大改革をしました。
しかも,君たち武士が自分を犠牲にして廃藩置県を成功させたことに,私は驚きました。
これは,日本が世界に誇れることです。
【指示】授業の感想をノートに書いておきなさい。

【子供の感想】
 1. 一滴も血が流れていないなんて凄いなと思いました。
 2. 自分が犠牲になるのに凄いことをやるなと思いました。
 3. 武士たちはグリフィス先生の言葉だけで納得したのか。
 4. グリフィス先生は他の国の人を褒めるから,変わっている人だなぁと思いました。
 5. きっと日本はこれ以上の死者を出したくなかったから戦争をしなかったと思いました。
 6: 自分を犠牲にしてまで廃藩置県をしたのは何故だろう。
 7. 武士がクビになったのに,なんで戦争にならなかったのか。
 8. 世界が出来ないことをしたから,素晴らしいことだと思いました。
 9. 大名270人,武士とその家族180万人みんなクビになったから驚きました。
 10. みんなクビになった人達はこれからどうするのかなぁと思いました。
 11.  一滴も血を流さなかったので凄いし,大名の270人がクビになると180万人くらいの人もクビになったりして凄いと思いました。
 12.  わざわざ薩摩藩や長州藩から兵隊を集めたのに,意味がなかったと思いました。
 13. 最後の文章を見て,自分を犠牲にしてまでやるとは凄いと思いました。
 14. 廃藩置県の大きな改革に,一滴も血を流さなかったので凄いことだと思いました。
 15. 一滴も血を流さなかったから,私はびっくりしました。
 16. 同じ国同士で戦争にならなくてよかったなぁと思いました。
 17. 武士の人達は自分を犠牲にしても廃藩置県を成功させたから凄いと思った。
 18. 他の国が戦争を起こしてたくさんの人が死んだのに,一滴の血も流さなかったなんて本当に世界に誇れることです。


〈参考資料〉
◆安達 弘『人物学習でつくる歴史授業』明治図書
◆西尾幹二・藤岡信勝『国民の油断』PHP研究所
◆藤岡信勝・自由主義史観研究会『教科書が教えない歴史』(第1巻・第4巻)産経新聞社
◆萩 長州藩都・幕末史跡の宝庫 http://www.webkohbo.com/info3/hagi/hagi.html
◆幕末写真館 http://www.dokidoki.ne.jp/home2/quwatoro/bakumatu.shtml
◆余暇ナビ-テーマ-歴史・文学-人で訪ねる福井-福井を訪れた異邦人-グリフィス http://www.manabi.pref.fukui.jp/yoka/03/05/02/3-5-2-4.html