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 何のために勉強するのか?


何のために勉強するのでしょうか。

これは,答える人の経験の厚さや違いにより,それぞれ異なるはずです。

ここでは,私が小学校の教室で子供達に普段よく話していることを記しておきます。




一 働き,自立するため


何のためにお勉強をするのでしょうか。

これにはいろいろな考えがあるでしょうが,

まず親に頼らずに生きる力をつけるためというのは,誰でも賛同する考えだと思います。




親に頼らずに生きることを「自立」といいます。

皆さんは,いずれ学校を卒業します。

そして,社会に出ます。

親は順番から言えば,皆さんより早くこの世を去られます。

親がこの世におられなくなっても,生きていかねばなりません。

自立して生きていく力をつける必要があります。




自立して生活するにはお金がいります。

お金を得るには働かなければなりません。

働くとは「傍(はた)を楽(らく)にする」ことです。

人のお役に立つことをすることです。




人のお役に立つ,その対価としてお金を得ます。

お役に立てなければ,お金は得られません。




お役に立つには,ある程度の技術や技能が必要です。

相手の出来ないことをやって差し上げることで,お役に立てます。


産業界ではロボット化が急速に進んでいます。

オックスフォード大学のマイケル准教授は

「今後二〇年以内に今の仕事の半分が自動化される」

と述べています。




また,ニューヨーク州立大学大学院のキャシー教授は

「今の子供たちの六五%は,大学卒業後,今は存在していない職業に就く」

と述べています。




この二人の教授の言葉は,下村博文氏(元文部科学大臣)があちこちの談話で引用されています。




皆さんが社会に出る頃には,様々な仕事を機械がやってしまう世の中になっているということです。

そして,人間が仕事として携わる分野は,

今現在では想像も出来ないものが半分以上を占めているというのです。




今後ますます,めまぐるしく変化する社会の中で生きていかねばなりません。

そこで生き抜くには,学び続けなければなりません。





小学校では,その基本となるものを勉強します。

どんな変化にも対応し,自立できる強さを身につけるために,

今,目の前のお勉強を一所懸命にやることが大切です。




二 可能性を引き出し伸ばすため


何のためにこうやって毎日お勉強をしているのでしょうか。

様々な目的がありますが,一つには皆さん一人一人がもっている様々な可能性を

引き出し伸ばすためであるといえます。




算数で台形の面積の求め方を学びます。

しかし,将来仕事で台形の面積を求めることは多分ありません。

国語で詩を学び,詩を書きます。

しかし,卒業後大人になってから詩を書く人は少ないでしょう。




ならば,台形の面積の求め方を学ばなくて良いのか。

詩を書かなくて良いのか。




学校で学ぶことの多くは,私たち人類が数千年,数万年かけて

命がけで獲得した知恵であり財産です。

多くの先人が生涯をかけて発見し体得してきたものを学ばないのは大きな損失です。

義務教育のわずか九年間で数知れぬ先人の知恵を学べるのですから,

このチャンスを見逃してはなりません。




広く多くの分野の勉強をするうちに,自分の好きな分野,得意な分野が必ず見つかります。

その分野は,あなたが生涯かけて追究するべき分野なのかもしれません。

少なくとも,好きな分野が見つかり熱中できれば,

それだけあなたの可能性が引き出され能力が伸びます。




追究する途中で好きな分野が変わったり,或いはより専門的になったりするかもしれませんが,

それはそれで自然なことです。




成長とともに関心のある分野は変化するものです。

広く多くの分野を勉強しながら,自分の可能性を引き出し伸ばせばよいのです。




福澤諭吉は「心訓七則」の筆頭で

「世の中で一番楽しく立派なことは一生涯を貫く仕事を持つと云う事です」

と述べています。また,三つ目に

「世の中で一番さびしい事はする仕事のない事です」

と述べています。




広く多くの分野を勉強して,自分の好きな分野,得意な分野を見付けましょう。

一生涯を貫く仕事を持ちましょう。

その実現のためには,今目の前にあるお勉強に毎日取り組むことが大切です。




三 使命を果たすため


ところで,「人は皆,使命をもってこの世に生まれてくる」といわれます。

「使命」とは,責任をもって果たすべき重要な務めのことです。

この世に生まれてきたからには,やるべきことをやり遂げたいものですね。

使命を果たす生涯を送りたいものです。




「自分の使命は何か?」…これに答えられるのは,自分しかいません。

そして,その答えは多分そう簡単には見つかりません。

目の前のやるべきことを誠実に行い,広く多くを勉強する中で見つかるものだと思います。




勉強を毎日楽しくコツコツと続けましょう。

毎日少しだけ自分に負荷をかけ続けることで,

ある日突然能力が格段に向上していることに気付くものです。

そして,いつか自分の使命を見付けられます。